メディア掲載  財政・社会保障制度  2020.07.21

【数字は語る】コロナ禍でも財政健全化の道筋を残すのが政治の責務

週刊ダイヤモンド第108巻28号(2020年7月18日発行)に掲載

税・社会保障 新型コロナウイルス

17.3 %  ― リーマンショック時の税収減(国の一般会計における当初予算の税収見積もりと決算の税収との違い)
出所:財務省

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界の社会活動や経済活動に大きな影響を及ぼしているが、この問題はいずれ終息するはずだ。そのとき、日本はコロナ以前に抱えていた課題に再び直面する。その課題とは、財政・社会保障の改革である。

であるならば、政府は改革を放棄してはならず、政治的な意思を示す必要がある。改革の象徴の一つは、政府の財政健全化目標であり、それは「骨太の方針」において、国と地方を合わせた基礎的財政収支を2025年度に黒字化するという目標として記載されている。ここで重要なのは、7月中旬に閣議決定を予定している「骨太の方針2020」で財政健全化の目標が残るか否かだろう。

いずれ財政健全化が必要となるのは、大規模な補正予算の対策のほか、税収の動きからも明らかだ。例えば国の当初予算において、政府は19年度の税収を約62.5兆円と見積もっていたが、新型コロナの影響で、2年ぶりに60兆円を割り込む見通しだ。収入が急減した中小企業などに法人税や所得税などの納税猶予も認めており、20年度も税収は落ち込む可能性が高い。

08年のリーマンショックでは、国の一般会計における決算の税収は、当初予算の税収見積もりと比較して、17.3%も減少した。今回のコロナ危機は、リーマンショック以上で、税収減少は17%超となるのは確実だ。このため、さらに財政赤字は拡大して公的債務は累増するが、改革の旗印を一度降ろすと、もう一度掲げるのは、なかなか容易ではない。コロナ危機に直面する今、財政・社会保障の改革を早急に進める必要はないが、「骨太の方針」では財政健全化の目標はしっかり残すべきである。

先般、政府は経済財政諮問会議を開催し、「骨太の方針」骨子案を公表したが、「感染症拡大を踏まえた当面の経済財政運営と経済・財政一体改革」という項目などがある。コロナ禍の下でも、人口減少や少子高齢化は進んでおり、団塊の世代が75歳以上となる25年問題もあり、社会保障の改革はこれからが正念場である。コロナ危機の終息後も見据え、財政健全化の道筋を残すのが政治の責務のはずだ。