メディア掲載 グローバルエコノミー 2020.07.10
6月9日より日英通商交渉が開始された。英国は1月末に欧州連合(EU)から脱退したが、2020年中は移行期間とされ、これまで通りEUの関税同盟にとどまる。今年中に英国はEUと新しい通商関係について交渉するが、合意できなければ、互いの間で関税が復活する。ただ、そのいかんにかかわらず、英国は年末に関税同盟から脱退するので、21年から日本とEUとの経済連携協定に英国は含まれない。
例えば日本からEUに輸出する自動車の関税は19年に協定が発効した後、段階的に削減され8年目に撤廃される。だが英国向けの輸出では、関税が21年から10%に引き上げられることになる。日本がこれを避けるためには、日英間で自由貿易協定を締結しなければならない。現在のEUとの経済連携協定以上に自由化を進めることができれば、双方にとってメリットがある。
ブレグジット(英国のEUからの離脱)は、22年まで移行期間を延長できるが、ジョンソン首相は今年中に自由貿易協定交渉を妥結すると主張している。一方でEUはそのような短期間では合意できないとか、労働や環境などについてEUと同じレベルの規制水準の採用を英国が約束しなければ、関税ゼロでの輸出は認めないと、強気の主張をしている。離脱後もEUの規則を順守すべきだと言うに等しく、英国は反発している。
しかしEUから英国への最大の輸出品目は自動車で465億ポンド、英国からEUへの自動車輸出の2.6倍だ。英国とEUの交渉が決裂して英国と日本の自由貿易協定が発効すれば、EUから英国への自動車輸出は10%の関税が課される一方、日本は関税ゼロで輸出できる。英国にとっても、日英通商交渉の妥結は、対EU交渉への大きな助け舟になる。ウィンウィンの日英関係だ。