メディア掲載 財政・社会保障制度 2020.04.21
新型コロナウイルスの感染拡大が日本経済に及ぼす影響を把握するためには、大規模イベントや不要不急の外出等に関する自粛要請コストについても整理する必要がある。
まず、自粛要請で真っ先に打撃を受けているのが、宿泊業・飲食サービス業、観光業で、一種の「売上蒸発」が起こっている。例えば、政府主催の第4回「新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリング」において、定期航空協会は当面4カ月で約4000億円以上の減収、日本旅行業協会は3月が3274億円、4月が2931億円の減収と予測。日本百貨店協会は、2月の全国百貨店売上高は前年同月比▲12.2%の3661億円とし、約500億円の減収予測だ。
では、日本全体の売上蒸発はどの程度のものか。一つの参考になるのが、経済産業省が公表する「経済センサス・活動調査」である。直近(2018年6月)の確報によると、15年の全産業の売上高は約1625兆円。15年の名目GDPは約531兆円なので、全産業の売上高はGDPの約3倍であり、1日当たりの売上高は平均約4.5兆円である。
また、全産業の売上高のうち、宿泊業・飲食サービス業は約25兆円、生活関連サービス業・娯楽業は約46兆円、卸売業・小売業は約501兆円だ。これら産業の売上高が全産業に占める割合は約35%で、1日当たりの平均で約1.6兆円である。
東京商工リサーチの第2回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査によると、前年同月における2月の売上を100とするとき、約7割の企業が前年割れで、売上の中央値は全企業が90、中小企業が90、大企業が95だ。3月の売上減はさらに加速する可能性があり、仮にこれら産業の売上が前年同日比で1日15%減少と予測するとき、どうなるか。
これら産業だけで1日平均の売上蒸発は約0.24兆円、1カ月で7.2兆円と試算できる。この試算は前提に依存する大雑把なものだが、自粛が長期化し、3カ月継続すると21.6兆円、6カ月継続なら43.2兆円の売上蒸発になる。