ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2020.04.10
本稿はワーキング・ペーパーです
この論文では、戦前日本における金融市場統合の過程を、複数均衡の存在を考慮して検証する。具体的にはPhillips and Sul(2007)が提案したlog t regression and club convergence testによって府県レベルの貸出金利の収斂を分析し、複数の収斂先グループを検出する。分析の結果、次のことが明らかになった。
1888年から1900年の期間、金融市場は2つのグループに向けて収斂しつつあったが、1901年以降は単一の全国市場に向けての収斂が進んだ。しかし1927年以降は再び収斂の軌道が分裂し、収斂先グループは4つとなった。1928年に施行された銀行法による規制が、各地域市場内における銀行間競争と地域間の資金移動を制限することによって、金融市場統合の動きを逆転させたと考えられる。
Capital Market Integration with Multiple Convergence Clubs: The Case of Prewar Japan(英語)