メディア掲載  グローバルエコノミー  2020.04.01

コロナウイルスと米大統領選挙

日本経済新聞夕刊【十字路】2020年3月19日に掲載

 最近までトランプ米大統領は、新型コロナウイルスをうまくコントロールしており大変な事態だというのはメディアのフェイクニュースだと主張していた。しかし感染拡大に追い込まれた彼は3月11日、ヨーロッパからの渡航を禁止して、13日には国家非常事態を宣言。直近では総額1兆ドルの景気刺激策の検討に入った。

 彼は再選に向けて、黒人の失業率は過去最低だと主張してその票を獲得しようとしたり、株価が就任以来大きく上昇したことを訴えたりしていた。コロナウイルスについてのこれまでの楽観的な発言は、雇用や株価に対する影響を懸念したためである。

 先進国で比重が高まっているサービス産業は雇用面でも重要である。米国では国内総生産(GDP)で12%の製造業が雇用では8%の比率しかないのに、GDPで3%のホテル・飲食サービス業は雇用では9%を占めている。

 サービス産業では基本的に生産と消費が同じ時、場所で行われる。ブロードウェーに行ってミュージカルを見る。サービス産業は人が集まるところで成立する。だがコロナウイルスの感染防止のためには、人の集まりを規制しなければならない。雇用面で重要なサービス産業が打撃を受ければ、失業者が増える。株価もこの3年間の上昇をすべて失うほど下落した。これは消費者マインドを冷やし経済・雇用に影響する。トランプ大統領の再選戦略に狂いが生じた。

 初動操作を誤ったトランプ大統領に対して、副大統領として行政経験もある民主党のバイデン候補への評価が高まっている。20~30%いるとされる無党派中間層が意思決定するのが11月の選挙直前だとすれば、その時にコロナウイルスと米国の経済・雇用がどうなっているかが、選挙の行方を決めるだろう。