メディア掲載 財政・社会保障制度 2020.03.24
先般、内閣府は「四半期別GDP速報」(2019年10~12月期2次速報値)を公表した。このデータから結論を述べると、19年10月の消費増税が増税期の実質GDP成長率に及ぼした影響は、14年4月の消費増税が及ぼした影響よりも小さかった可能性がある。新聞やテレビ等では、19年10~12月の実質GDP成長率が▲7.1%になったと報道しているが、これは年率換算の値である。四半期ベースでは前期比▲1.8%であり、この値を利用する方が適切である。
14年の消費増税でも、同年4~6月の実質GDP成長率は前期比▲1.9%であったが、それ以降の実質GDP成長率は同年7~9月が同0.1%、同10~12月が同0.5%、15年1~3月が同1.4%であった。
むしろ重要なのは、過去の増税期と比較して、今回のインパクトがどうであったのかだ。また、消費増税が実質GDP成長率に与えた影響を把握するためには、トレンド成長率と比較する必要があり、それは「実質GDP成長率-トレンド成長率」で評価できる。すなわち、増税後の実質GDP成長率がトレンド成長率を上回れば増税の影響はなく、下回ったとすれば増税の影響はあったと判断できる。
この評価で最も難しいのはトレンド成長率の推計だが、ここでは、最も単純な方法として、トレンド成長率を増税直前までの約5年間の実質GDP成長率(前期比)の平均とし、冒頭の四半期別GDP速報値から、消費増税のインパクトを試算してみよう。
このとき、1989年のトレンド成長率は1.31%であり、97年が0.44%、14年が0.42%、19年が0.26%となる。このトレンド成長率を用いて、過去3回と今回の増税期のインパクトを試算してみると、増税ショックが最も大きかったのは89年の▲2.61%であり、それから14年の▲2.32%、19年の▲2.06%、97年の▲1.14%と続く。新型コロナウイルスの感染拡大が日本経済に及ぼす影響にも注意が必要だが、19年の増税ショックは、97年よりは大きいが、14年や89年よりも小さい可能性が読み取れる。