メディア掲載 財政・社会保障制度 2020.02.28
中国やインドなどの台頭に伴い、もはや日本は経済大国の地位を失い始めている。そのような状況で、米中対立が深刻さを増すのは、中国の経済力がアメリカも凌駕しつつあるためだ。
IMFデータによると、市場為替レートベース(ドル換算)で、1995年のアメリカ・中国・日本の世界経済に占める割合は各々24.6%・2.4%・17.6%であったが、2010年に中国は日本を上回り、各々22.7%・9.2%・8.6%になった。2018年は各々24.2%・15.8%・5.9%で、アメリカは中国をまだ上回っている。しかしながら、一部の経済学者の予測では、市場為替レートベースで中国が2030年代にアメリカを追い越すという推計もある。
また、財・サービスの生産量でみた「購買力平価ベース」では、2014年に中国はアメリカを上回っている。IMFデータによると、購買力平価ベースで、1995年のアメリカ・中国・日本の世界経済に占める割合は各々19.9%・5.9%・7.8%であったが、1999年に中国は日本を上回り、各々20.6%・7.2%・7.0%になった。2018年は各々15.2%・18.7%・4.1%で、すでに中国はアメリカを凌駕している。
この事実はアメリカも十分に理解しており、それが米中対立を引き起こす要因の一つとなっている可能性がある。
他方、日本の経済力の低迷を示すもう一つの象徴が、世界の時価総額ランキングにおける日本の地位の急落だろう。例えば、1989年の世界の時価総額ランキングのトップ25に日本企業は19も存在したが、2018年において、日本企業は1社も存在しない。日本企業のトップは、トヨタ自動車が35位で登場するくらいである。
ランキングの上位はアメリカや中国などのネット企業等が占め、いま世界では、インターネット検索のグーグル(Google)、スマホの「アイフォーン」で有名なアップル(Apple)、SNS大手のフェイスブック(Facebook)、ネット通販大手のアマゾン(Amazon)がビッグデータの蓄積を含む情報市場を席巻している。
経済力は安全保障の分野にも影響を及ぼす。あまり知られていないが、defensenews.com というネット上のサイトがある。このサイトは一定の基準に従い、世界における防衛産業のランキングを公開しており、2008年と2019年のトップ25は、以下の図表のようになっている。なお、当然ながら、5G等の通信分野といった広義の産業も防衛産業と見なすか否かで順位や登場する企業名が変わるのは明らかだが、このサイトでは狭義の防衛関連の売上高でランキングを行っている。
2008年のランキングは2006年の防衛関連売上、2019年のランキングは2018年の防衛関連売上によるものだが、まず一目瞭然なのが、2008年のランキングではトップ25位に一社もいなかった中国企業が、2019年のランキングではトップ25のうち中国企業が8社も登場していることである。また、2019年のランキングでは、1位から4位はアメリカ企業であるものの、その次の5位は中国企業になっている。2008年のランキングでは、日本企業として三菱重工が25位に留まったが、2019年のランキングでは日本企業は90位台に急落し、トップ25のリストから日本企業は消滅している。
経済力の再生を含め、米中対立の狭間で、日本が生き残る戦略とは何か、真剣な議論を行う時期にきているのではないか。