メディア掲載 財政・社会保障制度 2020.01.29
2020年が始まったが、昨年の国内出生数は86万人となり、人口動態統計上、1899年以来初めて90万人を下回った。人口減少が加速しており、日本財政を取り巻く環境は一層厳しさを増している。政府は改革の司令塔として「全世代型社会保障検討会議」を設置し、全世代が安心できる制度改革の方向性の議論を行い、今年の夏までに最終報告を取りまとめる方針だが、本当に踏み込んだ改革案を示せるか、政治の本気度が問われている。
このような状況の中、今年1月から国会で20年度予算案の審議が始まる。政府は「経済再生と財政健全化の両立を目指す予算」と説明するが、本当だろうか。
そもそも、政府は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化を25年度に実現するという目標を掲げているが、19年度と比較して、20年度の国のPB赤字は拡大している。というのは、国の一般会計予算(当初)において、税収等は19年度が68兆7966億円、20年度が70兆1018億円であり、「臨時・特別の措置」を含む政策経費は19年度が77兆9489億円、20年度が79兆3065億円になっている。このため、19年度のPB赤字は9兆1523億円、20年度は9兆2047億円であり、国のPB赤字は500億円くらい拡大している。19年に消費税率を引き上げたものの、「臨時・特別の措置」を除いた予算の100兆円超えは初めてで、増税しても歳出が膨張しては財政赤字の縮小幅が低下し、財政再建が遠のくだけだ。
なお、政府の景気判断では、戦後最長の景気拡大が続いているとの話だが、19年度の税収は見積りより下振れしている。にもかかわらず、政府は20年度の名目GDP成長率を2.1%とし、税収は過去最高の63兆5130億円を見込む。2.1%の成長率は、1995~18年度の平均成長率(0.39%)の約5倍もある前提だ。
このような状況の下での改革は容易ではない。だが「令和」という新たな時代が始まった今こそ、政治や我々は「現実」を直視し、本当の意味での財政・社会保障の改革に取り組む必要があろう。