メディア掲載 グローバルエコノミー 2019.11.29
今、ワシントンは大統領弾劾という歴史的事件で大きく揺れている。議会での政府関係者の証言によって、トランプ米大統領がウクライナへの軍事援助の見返りに、2020年の大統領選挙でライバルとなるパイデン前副大統領のウクライナでの行為について調査するよう、同国に圧力をかけたことが明白となった。
おかげで自動車関税を引き上げるかどうかの決定は、弾劾審査の前にトランプ大統領が「十分に説明を受けているので早く結論を出す」と発言したにもかかわらず、11月14日としていた期限が宙に浮いたまま。ジョージタウン大学のジェニファー ヒルマン法学教授は「期限切れで発動されない」と述べたと伝わる。
3日にブルームバーグが報じたインタビューで、ロス商務長官が「日欧韓の自動車メー力ーと良好な会話を持てたので、この発動は必要ないかもしれない」としていた。トランプ大統領はライトハイザー通商代表などの意見を聞いたうえで、消費者や業界に大きな影響を与えることはしない、と判断したのだろう。
注目したいのは、ライト八イザ一代表やロス長官に加え、ムニューシン財務長官、ナバロ大統領補佐官ら通商交渉に関わる閣僚が、トランプ政権の発足後、一度も解任されていないことだ。アメリ力の雇用を侵害しているとして、トランプ大統領が貿易と並んで力を入れていた移民問題を担当する国土安全保障省の長官が政権で5人目であることを考えると、驚くほどの安定性である。
米中交渉でム二ユーシン長官が中国と合意した内容をひっくり返したりしたことはあるが、トランプ大統領は通商分野では閣僚たちが決定した案をおおむね支持してきたのではないだろうか。通商関係では、トランプ大統領の気まぐれをそれほど心配しなくてもよいかもしれない。