メディア掲載  財政・社会保障制度  2019.08.27

【数字は語る】対立激化が予想される米中貿易戦争の狭間で日本はどう生き抜くか

週刊ダイヤモンド 2019年8月10-17日号に掲載
2014― 購買力平価ベースで中国の世界経済に占める割合が米国を上回った年
(出所:国院通貨基金(IMF )データ)


 米国と中国の覇権を巡る戦いが2018年以降に顕在化した。この一つの象徴が、18年7月、米国が輸入する中国製品のうちロボットや工作機械など約800品目に約340億ドルの制裁関税を発動し、中国も同規模の報復関税を課したことだった。その後、第2弾、第3弾と制裁関税などが続き、19年5月には、中国の華為技術(ファーウェイ)や関連企業68社を米国企業の製品販売禁止リストに指定した。

 19年6月下旬のG20大阪サミットでのトランプ大統領と習近平国家主席との米中首脳会談によって、現在は休戦状態だが、このような対立を生み出す要因は何か。

 それは中国の経済力が米国を凌駕しつつあるためだ。国際通貨基金(IMF)データでは、市場為替レートレベル(ドル換算)で、1995年の米国、中国、日本の世界経済に占める割合は各々24.6%、2.4%、17.6%であったが、10年に中国は日本を上回り、同22.7%、9.2%、8.6%になった。18年には同24.2%、15.8%、5.9%で、米国は中国をまだ上回っている。

 だが、財・サービスの生産量で見た「購買力平価ベース」では、14年に中国は米国を上回っている。IMFデータによると、購買力平価ベースで、95年の米国、中国、日本の世界経済に占める割合は各々19.9%、5.9%、7.8%であったが、99年に中国は日本を上回り、同20.6%、7.2%、7.0%になった。18年は同15.2%、18.7%、4.1%で、中国は米国を凌駕している。

 この事実は米国も十分に理解しており、それが米中貿易戦争を引き起こす要因の1つとなっている可能性が高い。なお、IMFデータによると、81年から20年における1人当たり国内総生産(GDP)の平均成長率(ドルベース、予測を含む)は、中国11.3%、米国3.5%、日本2.7%であり、この成長率が継続するとき、中国の1人当たりGDPが日本、米国を追い抜くのは、41年、47年となる。米国と中国という超大国の狭間で、覇権交代の確立をどう予測し、日本がどう生き抜くのか。真剣な議論が望まれる。