メディア掲載  グローバルエコノミー  2019.07.16

【平成農政を振り返る】減反廃止はフェイクニュース、令和で真の改革を

時事通信社『Agrio』 2019年7月2日号に掲載

 平成の農政改革の成果として、政府は主食用米の生産数量目標の設定をやめたことで、「生産調整(減反)を廃止した」とアピールする。これに対し、山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹はインタビューで、「減反廃止とは転作補助金を廃止することだ」と強調。転作補助金はむしろ増えていることを指摘し、「減反廃止はフェイクニュースだ」と反論する。令和の課題として、本当の減反廃止を行い、主業農家への農地集積や輸出競争力拡大といった改革を実現すべきだと訴えた。(聞き手=編集長・菅正治)


◇自由化対策から始まった平成農政

 ―平成農政をどうみているか。

 自由化対策から平成が始まったと言っていい。日米農産物交渉が1988(昭和63)年に合意され、牛肉はうまく処理した。輸入数量制限を関税化したが、これはGATT(関税貿易一般協定)のウルグアイ・ラウンド交渉の関税化のモデルとなった。関税率は初年度の91(平成3)年度が70%、次年度が60%、3年目が50%で、その後はウルグアイ・ラウンド交渉の結果、38.5%になった。毎年1000億円ほどの牛肉関税収入を国内の畜産対策に使うことにした。しかし、累計で2.5兆円も使いながら体質強化につながらなかった。

 次の大きな出来事がウルグアイ・ラウンド交渉だ。86年に始まり、実質的に終わったのが93年12月15日だった。なぜ日にちまで覚えているかというと、私自身がピーター・サザーランドGATT事務局長が木づちを振り下ろして終結宣言をしたその場にいたからだ。

 私はコメの関税化の特例措置や農業協定の最終ドラフト交渉を担当した。関税化すれば、ミニマムアクセス(最低輸入量)は基準年となる1986~88年の消費量に対して初年度3%、6年後に5%になる。しかし、(関税化しない)特例措置を受けるのなら、何らかの代償を払わなければならないのがGATTのルールだった。それでミニマムアクセスを初年度に4%、6年目に8%にすると約束した。途中で関税化に移行すると、毎年の伸びが0.8%でなく0.4%になるため、今は7.2%、77万トンとなっている。・・・


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