メディア掲載 財政・社会保障制度 2019.02.12
日本の公債残高は2019年度に897兆円に達する見込みだ。国の一般会計税収(約62兆円)の14年分だ。19年度における国の一般会計(予算案ベース)も約101兆円と税収をはるかに上回っており、国債発行なしには財政運営は回らなくなっている。
それでも、日本の財政が破綻せずに済んできたのは、国債の大部分が国内で消化できているためだ。日本銀行の「資金循環統計」によれば、日本国債の海外保有率は約6%しかない。海外の投資家が日本国債を売り浴びせたとしてもインパクトは小さい上、日本は経常黒字で対外純資産も黒字のため、ギリシャのような経済危機にはつながらない。
では、国債の国内消化にいずれ限界はこないのだろうか。この問題は経常収支といったフロー変数での議論が多いが、ストック変数との関係も重要で、その視点では「資金循環統計」に一つのヒントがある。これは、一般政府、企業、家計、海外などの各部門の金融資産と負債の時系列データだ。各部門の金融資産と負債の合計額は一致し、その関係から、国債を国内で消化する場合、一定の仮定の下、一般政府部門の負債は、家計の金融純資産(金融総資産から住宅ローン等の負債を除いたもの)を超えてまで膨張はできない。
そこで、家計の金融純資産を事実上の上限として、一般政府総債務との差を時系列で確認してみた。1990年度には381兆円あったのが、17年度では226兆円にまで縮小している。つまり、27年間で155兆円も縮小しており、年間平均約6兆円のスピードで縮小している。現状の勢いが続く場合、55年度にはゼロになる。
冒頭で紹介した多額の公債残高を思い起こしていただきたい。長期金利が1%上昇すれば、その利払い費は約9兆円増加する。その結果、財政赤字が9兆円増えると、年間6兆円の縮小スピードが年間15兆円に加速する。その場合、32年度にゼロ水準に達してしまう。
社会保障費が増加すれば財政赤字はさらに拡大する。さまざまなシナリオを想定し、財政・社会保障の改革を進める必要がある。