コラム  エネルギー・環境  2019.01.09

仮払い制度に関する提言その2-災害救助アプローチの可能性-

 平成30年12月5日、「原子力損害の賠償に関する法律」(以下「原賠法」という。)の改正が国会で可決、成立した。今回の改正ではその対象に、原子力事故の被害者に対する仮払い・立替払いを制度化することが含まれている 。同年5月、我々は、「原子力損害賠償における仮払い・立替払いについて―検討対象の整理―」を公表しところである。この提言では、仮払い・立替払いの概念整理を出発点として、仮払い・立替払い制度のみを改正の対象として検討することでは不十分であり、同時に原子力事業者の倒産、不可抗力免責などをも含んだ検討が必要であることなどを提言した。

 また、特に、福島第一原子力発電所事故の教訓を生かすという観点から考えたとき、同事故の機序を分析して、原子力発電の安全性を向上させ、事故を起こさせないことが最重要であることは異論がない。しかし、同時に、仮に事故が起きてしまった際の対処についても、同事故の教訓を生かす場面があると考えている。その1つが、この提言で検討する仮払い・立替払い制度に関する災害救助アプローチである。

 以下では、上記の5月の提言に続くものとして、損害賠償という枠組みからだけではなく、原子力事故により引き起こされる災害を救助するとの観点から分析し、立法の方向性を提言する。まず、原子力事故の特徴について確認し(本文Ⅱ)、災害法と事故法の2つのアプローチがあることを述べる(本文Ⅲ)。その上で、これまであまり注目されてこなかった、災害法のアプローチから立法に向けた提言を試みたい(本文Ⅳ)。・・・



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仮払い制度に関する提言その2