メディア掲載  財政・社会保障制度  2018.07.02

【数字は語る】東京以上に深刻な神奈川と埼玉の保育士の不足

週刊ダイヤモンド 2018年6月30日に掲載

 政府・与党は6月15日に経済財政諮問会議で「経済財政運営と改革の基本方針2018」を取りまとめ、いわゆる「骨太の方針2018」を閣議決定した。

 骨太の方針では財政再建の日標や医療・介護などの社会保障改革に注目が集まるが、静かな有事ともいうべき人口減少が進む中、少子化対策も重要である。今回の方針でも、「希望出生率1.8」の実現を目指すため、幼児教育の無償化(3~5歳の全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用の無償化)が盛り込まれた。

 だが、共働き世帯が標準となった昨今、早急に対処すべきは保育所の整備だ。特に、保育士の不足から保育所が乳幼児を受け入れられなくなっているのは大きな問題である。

 保育士不足については、東京都内のケースがメディアなどで注目されることが多い。だが、現実には、都内よりも深刻なところが多々ある。

 厚生労働省の「平成28年社会福祉施設等調査」や国勢調査のデータを用いて、0~6歳人口一万人当たりの保育士数を都道府県別に試算してみると、1位が島根県の943人であるのに対して、神奈川県は386人で38位となっている。1位と比べて神奈川県には2.4倍の格差がある。

 40位は埼玉県の385人で、千葉県は43位で373人。44位は愛知県(367人)、45位は大阪府(327人)、47位は兵庫県(306人)と続く。

 これに対して東京都は23位(509人)。決して楽観できる水準ではないが、東京以外の首都圏や愛知・大阪・兵庫の方が保育士不足は深刻ということになる。

 神奈川・埼玉・千葉の順位が東京よりも低いのは、東京は結婚相手を探すのに効率的なマッチング市場だが、住宅を含む生活費が高いが故に、結婚後は東京以外の首都圏に居住する夫婦が多いためだろう。

 「希望出生率1.8」の実現を目指すためには、精緻なデータ分析を行いつつ、大都市圏の東京以外のエリアの保育士不足問題にも目を向けていく必要がある。