メディア掲載  グローバルエコノミー  2016.06.14

地方創生に必要なこと

JOYO ARC(一般財団法人 常陽地域研究センター)2016年6月号掲載

はじめに

 地方創生が国の政策の大きなテーマになった。地方は人口も減少し、活力がなくなっているという認識なのだろう。しかし、地方創生というネーミングは新しいが、地域の再生・活性化は、繰り返し取り上げられてきたテーマである。最近になって脚光を集めたものではない。戦後だけでも、「国民所得倍増計画」が都市と地方の格差の是正を取り上げたのが1960年。1962年からの累次の全国総合開発計画。最初の過疎法である「過疎地域対策緊急措置法」が10年の時限立法として制定されたのが1970年。このテーマは、政治のアジェンダに載り続けている。ということは、いまだに解決できていない古くて新しい課題ということである。

 しかし、我々が地域の再生・活性化という課題に失敗したのだろうかというと、そうではない。中国では、都市と農村の一人当たり所得格差が3倍以上に拡がっているという「三農問題」が内政上の最重要課題になっている。都市や工業の発展を図るために、農業に課税したり、農産物価格を抑制して食料品価格を抑え労働費を安くしたりするなど、農業搾取政策をとってきた。中国では、経済成長を優先し、格差の是正に無関心だった。そのつけが今の政権に回ってきている。

 これに対して、我が国では、高度成長を経て農村は豊かになった。中国のような格差は、日本には存在しない。2016年1月、私は、中国の国家発展改革委員会で日本が採った都市と地方の格差是正政策について講演したところ、日本の政策を研究したいという発言が出た。ベトナムの政策担当者は、日本の農村振興政策を真剣に勉強している。大分県の一村一品運動はタイなどで普及している。格差の是正や地域振興という点では、日本はある程度成功してきたといえる。

 それなのに、このテーマが依然として国政で取り上げられるということは、過去に華々しい成果を挙げてきたこれまでの手法が通用しない状況に、我々が直面しているからに他ならない。これまでと異なった状況が出現し、我々は、それに対応できる地域の再生・活性化政策をいまだに持っていないのである。・・・


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