メディア掲載  財政・社会保障制度  2015.10.21

仮想通貨の技術的可能性

日本経済新聞 「経済教室」2015年10月16日掲載

 分権型の仮想通貨「ビットコイン」は、貨幣の本質的な性質を斬新かつ巧妙な方法で実現したものだといえる。ビットコインの実体はネット上に存在する過去から現在までのすべての取引記録の帳簿(ブロックチェーンと呼ばれる)である。この帳簿には、全世界のビットコインに関するすべての取引が記録されている。各参加者は、このブロックチェーンを自分のコンピューターやスマートフォン(スマホ)で同期し、共有する。

 一般に、「支払い」が成立するための本質的要請とは、「取引の不可逆性」と「安全性(二重払いなどの不正防止)」が通貨システムで確保されることである。取引の不可逆性とは、あとで支払の事実が(データ改ざんやしらばっくれなどで)否認できないことである。紙幣や硬貨による支払いなら、貨幣を物理的に受け渡した事実によって、取引の不可逆性は成立する。二重支払いの問題も、紙幣や硬貨なら、Aさんに支払った貨幣をBさんにも支払うのは物理的に不可能だ。しかし、ネット上ではデータのコピーが容易なので、不可逆性や安全性の確保が重要になる。・・・


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日本経済新聞 「経済教室」2015年10月16日掲載