メディア掲載  グローバルエコノミー  2015.04.27

コメの内外価格差が消えた 減反を廃止する環境がととのってきた

WEBRONZA に掲載(2015年4月10日付)

 コメの輸入に異変が起きている。2014年度、日本がアメリカ等に開いている主食用の輸入枠10万トンがほとんど消化されなかったのである。

 ガット・ウルグァイ・ラウンド交渉で、輸入数量制限など関税以外の措置は廃止し、当時の内外価格差を関税に置き換えて設定することが要求された。しかし、その内外価格差は大きかった(現在1キログラム当たり国内米価200円に対し関税はこれを大きく上回る341円)ので、一定の輸入を行わせるために、ミニマム・アクセスという輸入枠が設定された。

 日本のコメの場合、ミニマム・アクセスは77万トンであるが、アメリカの要求を入れて、そのうち一定量は主食用として日本の市場に入れることとした。その入札方法は同時売買(SBS)方式といい、海外の売り手と日本の買い手がセットで入札し、買い手の価格(日本での卸売価格に相当)と売り手の価格(日本への外米輸入価格)の差が大きいものから落札するというものである。

 この差は内外価格差に他ならない。内外価格差があれば、必ず入札に応じる業者が出てくる。これまで例外的な年を除いて、この輸入枠の消化率は100%だった。

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 例外的な年としては、国産米価が12%低下した2010年度に消化率は31%、13%低下した2013年度の消化率は61%だった。しかし、2014年度は国産米価が12%下がっただけで、消化率は12%となった。特に、最終回の3月では、政府が88,610トンの枠を提示したにもかかわらず、216トンの落札にとどまった。なんと消化率は0.2%である。

 2014年度の米価の低下は、農協の価格操作によるものだが(「米価を低下させた農協が要求する価格補てん」WEBRONZA2014年10月9日付)、米価自体の水準は12,481円(60キログラム当たり)と2010年度の12,711円とほぼ同じ水準だった。明らかに、次の図が示す通り、内外価格差が解消したのだ。

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 かつて大量に輸入された中国産米は2013年度以降全く輸入されていない。2014年度のカリフォルニア米の輸入価格は12,582円である。2014年度平均の国産米価より高い。現在深刻な干ばつとなり、州知事が州民に大幅な節水を呼び掛けるまでの深刻な水不足となっている同州では、米生産の縮小が予想され、価格が下がるという状況にはない。

 2014年9月から米価は傾向的に低下しており、国内の米価は2015年2月で12,044円である。さらに、従来、日本市場で国産米はカリフォルニア米よりも2~3割ほど高く評価されていた。これは品質格差を反映したものである。

 ということは、内外価格差は解消したどころか、完全に逆転した。これはTPP交渉で関税を撤廃しても、国内米農業にはなんら影響がないことを意味している。しかも、国産の米価は減反で維持されている価格である。

 減反を廃止すれば、8,000円程度に国内の米価はさらに下がり、輸出を大々的に行えることになる。輸出が増えれば、国内市場の供給量が減少するので、8,000円以上に米価は上昇する。米価が上がるので、国内の米生産は拡大する。農業界が好きな食料自給率も向上する。

 そろそろ、減反を廃止する環境がととのってきたのではないだろうか。