TPP交渉の合意が近づいている。最後の焦点の一つが米であるが、政府は高関税を維持するために、輸入特別枠を検討している。聖域化している高関税の背景には農協が存在する。
TPP交渉の合意が近づいている。自由貿易推進の共和党が多数を占めている連邦議会は、通商交渉権限を政府に譲る貿易促進権限法を、春にも可決しそうである。アメリカ政府としては、いつでも交渉を妥結し、合意文書に署名できる用意が整う。
日本とアメリカの農産物をめぐる協議も、合意に近づいている。日本は、牛肉や豚肉の関税を大幅に削減することに合意した。関税撤廃を強く迫っていたアメリカの豚肉団体が、これを評価したことで、ワシントンでは、日米の交渉はまとまるという見通しになっている。
米について、日本は、関税を維持する代わりに、ミニマム・アクセスといわれる毎年77万トンの低関税の輸入枠に加えて、5万トンの米国産の輸入特別枠を検討していると報道されている。
■政府が米の関税を下げられぬ理由
2012年から為替レートは50%ほど円安になっている。38.5%の牛肉関税がなくなっても影響はない。
問題は米である。日本は、あいもかわらず高い関税を維持するために、低関税の輸入枠を増やすという交渉をしている。これまで、ミニマム・アクセスで輸入した米と同じ量を、家畜のエサ等に処分して、国内需給に影響を及ぼさないようにしてきた。高く買って安く売るのだから、これまで3,000億円ほどの税金を無駄に使った。今回の輸入枠で、さらに無駄に税金が使われる。
しかし、関税維持しか方法がないのだろうか? 米の関税は778%と言われるが、あるのは、キログラム当たり341円という従量税だけである。これを安いタイ米と比較して、778%に相当すると言っているだけだ。
国産卸売米価は200円である。341円という関税は、輸入米が0円で入ってきても、国産米と競争できない過剰な関税である。日本の米と品質的に近いカリフォルニア米が150円で輸入されるとすると、50円の関税があれば、品質に優れた国産米は十分過ぎるほど保護できる。関税は、341円から50円まで85%も削減できる。ここまで下げなくても、341円と200円との差の141円は、0円の米が輸入されても、不要な関税なので、なくしても何も問題は生じない。・・・
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