メディア掲載  グローバルエコノミー  2014.06.30

国民目線の農協改革(第2回)

「週刊農林」2014年6月25日号掲載

 協同組合の目的は、組合員にサービスを提供することで、組合員の所得や生活を改善するなど、組合員により多くの利益を与えることである。その原則は、「利用者が所有し、管理し、利益を受ける」という簡単なものである。株式会社の場合は、株主だけが会社の製品やサービスを購入するのではない。株式会社は、株主ではない不特定多数の人に製品やサービスを販売し、その利益の配分を株主が受ける。これに対して、協同組合は、製品やサービスを購入する人が所有者で、営利を目的としない。組織の重要な事項について投票し、決定するのも、利用者である。

 農協には、正組合員である農家以外に、利用はできるが、意思決定には関与できない准組合員制度がある。准組合員は、「利用者が管理する」という原則からの大きな逸脱である。農協法の目的とは全く無縁の准組合員の増加は、農協が"脱農化"で発展したことの一つの現れである。しかし、准組合員が正組合員を上回るようになった組織が、"農業"の"協同組合"だろうか?そのうえ、農協には生協には否定されている員外利用制度が認められている。ムラではなく"マチのみんな"のJAバンクは、国民的なテレビ番組のスポンサーとなって、組合員だけではなく、不特定多数の国民一般に広告宣伝活動を行っている。これらの利用者は組合員ではないので、「利用者が所有する」という原則に反している。

 農協は多数の子会社を作ることで、不特定多数の人に製品やサービスを販売してきた。全農の株式会社化という改革案に対して、JAはすでに多数の子会社を作っていると主張し、協同組合であることを進んで否定するような反論を行った。組合員農家に高い農業資材価格を押し付けたり、組合員農家が農協を通じないで作物を販売しようとすると、融資をしないとか、施設を利用させないとかという圧迫を加えたりしてきた組織が、「利用者が利益を受ける」という原則に合致しているとは考えられない。

 農協の制度、運用や実態は、協同組合原則に合致していないのである。

 JAから、民間組織である農協に政府が関与するのはおかしいという反論が出されている。しかし、銀行は他の業務の兼業は禁止されているし、生命保険会社は損害保険業務をできない。農産物の販売だけでなく、生活物資の販売も、銀行、生命保険、損害保険の業務も、全ての業務が可能な法人は、日本国内で農協しかない。この特別の権能を認めている農協法は、戦後の食糧難時代にコメを政府に集荷するために、農林省がGHQと交渉して作った法律であって、農協が作ったものではない。GHQが農協に金融事業を認めると独占力が高まると反対したのに、農林省は、農家にコメ代金を払うために金融業務が必要と主張して、認めさせた。今の時代の農協法のあり方について、政府や国会が議論するのは当然である。(つづく)