メディア掲載 財政・社会保障制度 2014.06.27
近年、財政再建や地球温暖化、原子力発電など、世代を超えた超長期の時間軸を持つ政策課題が増えている。
米アトランタ連邦準備銀行のR・アントン・ブラウン氏らの試算では、日本が厳しい増税と歳出削減を今すぐ始めたとしても、公的債務の国内総生産(GDP)比率を安定させるのに150年近くかかる。温暖化ガスの排出抑制も、環境への効果が明らかになるのは100年以上先だ。放射性廃棄物の最終処分場も、技術的には今すぐ建設可能だが、政治的に立地を決定できないのが現状である。多大な政治的コストをかけて建設しても、利益を得るのは数十年以上先の世代で、我々の世代は恩恵を感じにくい。
こうした超長期の政策課題について、経済学的な研究も進んでいる。鈴村興太郎早稲田大学教授編「世代間衡平性の論理と倫理」(2006年出版)で論じられているように、超長期の政策を評価する前提として、世代間の公平性(衡平性)とは何か、を探究する研究が厚生経済学の一分野として発展している。
米ボストン大学のローレンス・コトリコフ教授らは1992年の論文で世代ごとに政府に対する支払いと政府から受ける給付の差額を計算する「世代会計」の考え方を提唱し、広く経済分析に使われるようになった。世代会計により、世代間の所得移転による格差を定量的に比較できる。・・・
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日本経済新聞 「経済教室」2014年6月23日掲載