メディア掲載  グローバルエコノミー  2014.06.09

農協改革はどうして必要なのか

共同通信 2014年6月6日配信

 1955年河野一郎農林大臣が挫折して以来、60年ぶりに農協改革が政治の議題に上がった。

 既に民間組織である農協に政府が関与するのはおかしいという反論が、出されている。しかし、銀行は他の業務の兼業は禁止されているし、生命保険会社は損害保険業務をできない。農産物の販売だけでなく、生活物資の販売も、銀行、生命保険、損害保険の業務も、全ての業務が可能な法人は、日本国内で農協しかない。この特別の権能を認めている農協法は、戦後の食糧難時代にコメを政府に集荷するために、農林省がGHQと交渉して作った法律である。GHQが農協に金融事業を認めると独占力が高まると反対したのに、農林省は、農家にコメ代金を払うために金融業務が必要と主張して、認めさせた。今の時代の農協法のあり方について、政府や国会が議論するのは当然である。

 全農を中心とした農協は、肥料で8割、農薬、農業機械で6割の販売シェアをもつ巨大な企業体となった。それなのに、協同組合という理由で、全農には独占禁止法が適用されないし、一般法人の25.5%に対し19%という安い法人税、固定資産税の免除など、様々な優遇措置が認められている。

 農協は農家が安く資材を購入するために作った組織なのに、農家が全農を通じて肥料などの農業資材を購入すると高くつくという批判がなされてきた。高い資材価格は農家の負担となるだけではなく、最終的には高い食料品価格となって消費者の負担を増やす。様々な優遇措置がなくなることによって、全農が、一般の企業と同じ条件で競争するようになれば、資材価格や食料品価格の低下が期待できる。農協改革は、広く国民・消費者が関心を持つべき問題である。