ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2014.05.30
金融市場において安全資産が十分に供給されているか否かは、マクロ経済における重要な問題である。例えば、近年のサブプライム危機は、安全性を過大に評価された資産の暴落を契機として発生したが、その背景として、安全資産の供給過少という構造問題の存在が指摘されてきた。さらに、サブプライム危機に続いて生じた戦後最悪といわれる世界的な不況により、安全資産の供給問題が悪化した結果、現在でも安全と見なされる資産(例えば、アメリカや日本の国債や一部の都市の土地など)の価格はより一層上昇したが、これらは新たなるバブルの発生ではないかとも議論されている。
このような現象を理解するために、本論文では、合理的バブル理論を用いて、安全資産がバブル的な価値を持つ傾向について分析した。特に、安全資産の供給が十分ではないような経済では、市場参加者がその収益が安全であると信じる限りにおいて、固有の価値を持たない資産がバブルとして価値を持ちうることを証明した。理論的に新規な点は、これまでの合理的バブルの理論では、バブルの発生条件に借り入れ制約が重要な役割を果たしているのに対し、我々の理論では借り入れ制約は必要ではなく、供給されている資産のリスクの度合いのみがバブルの発生条件になっている点である。
Safe Asset Shortages and Asset Price Bubbles(英語) (PDF:463KB)