ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2014.04.01
金融危機後、長期停滞に陥るのは何故か?金融危機が生じると、時間的な遅れを伴って生産量や労働量が長期的に落ち込み、借り手から貸し手への正味資産の移転が生じる事実が観測されている。本稿では、借り手と貸し手の富の再分配に注目して、金融危機後の長期不況や景気循環で知られた事実を再現できるかを考察している。モデルの特徴は、企業は高生産性と低生産性の2つのグループが存在し、借入には担保が必要としている点である。分析の結果、技術ショックや金融ショックなどの外生的なショックが、正味資産の移転を伴う富の再分配を通じて影響が増幅され、生産量や労働量の持続的で増幅的な落ち込みや、全要素生産性の順循環的な変動など、実際に景気循環や金融危機後の停滞で観測される性質を再現できることを示した。この結果は、富の再分配が景気循環や金融危機後の停滞を説明する上で重要なメカニズムの一つである可能性を示唆している。
旧タイトル:Heterogeneity and redistribution shocks in business cycles
Heterogeneity and redistribution in financial crises(英語) (PDF:395KB)