メディア掲載  グローバルエコノミー  2014.01.30

消費者と政治

共同通信社より2014年1月14日配信

 昨年末、食料品などの消費税率を一般の物品より低くする軽減税率を導入するかどうかが、争点となった。公明党は低所得者のために軽減税率を求め、自民党は必需品かどうかの線引きが難しいうえ税収が落ちるとして、反対した。導入することにはなったが、その時期は「税率10%時」という、「税率を10%に上げた時」とも、それ以降の「税率が10%の時の間に」ともとれる"玉虫色"の表現で決着した。

 近年消費者行政と言うと、食品や自動車などの安全性が問題視されてきた。久々に、政治が「消費者家計」がどうなるかを問題にしたのである。

 かつて経済企画庁という役所に「物価局」という部署があった。食管制度によって政府がコメの売買に直接かかわっていた時代、農家保護のために政府が農家から買い入れる米価を上げると、財政負担が増えるので、卸売業者に売る価格(消費者米価)も上げた。これに「消費者家計の安定」という観点から抵抗していたのが、「物価局」だった。消費者団体も消費者米価の引き上げに反対した。

 今では、「物価局」もなくなったし、消費者運動も物の値段について熱心ではなくなった。今回、軽減税率導入で公明党は存在感を示したが、TPPで関税を下げないで消費者に高い食料品を買わせ続けることや、減反で主食であるコメの供給を減らして価格を高くすることについては、どう考えているのだろうか。政府は農産物に付加価値を付ける6次産業化を推進しているが、これは消費者に高く売りつけようという政策に他ならない。格差を指摘する人はいるが、食料品などの必需品が高くて買えないということは話題にされないように思われる。