コラム グローバルエコノミー 2013.12.25
はじめに
多角的貿易交渉を行なう場であるWTOがようやく少し息を吹き返した。12月3日から6日の日程でインドネシア・バリで開催された第9回WTO公式閣僚会議は、予定を1日オーバーしつつも、WTO発足以来初めてのマルチでの合意であるドーハ・ラウンドの部分合意に達し、閉幕した。
とはいえ、ここまでの道のりは決して平たんではなく、むしろ、バリ閣僚会議での合意は困難であるという見通しが強かった。本年9月に欧州委員だったラミー氏の後を受けて初めて中南米から選出された事務局長としてその任に着いた前ブラジル駐WTO大使のアゼベド事務局長は、11月26日の記者会見で、12月初めに行われる閣僚会議に向けて準備していたドーハ・ラウンドの部分合意について、「(大使級の交渉では)合意に失敗した」と述べていたからである。
2001年に開始されたドーハ・ラウンドは、2008年夏に主要交渉分野である農業分野と非農産品市場アクセス分野での合意失敗以降漂流を続け、2011年12月に開催された第8回閣僚会議ではその包括的妥結を断念、以来、「プラグマティックなアプローチ」として、細々といくつかの分野での交渉を継続してきていた。WTOにおける公式閣僚会議は最低2年に一回行われることが協定上規定されており、第9回閣僚会議に向けて比較的交渉が進んでいた貿易円滑化分野、途上国対応問題、そして農業分野における部分的な合意を目指して、交渉が行われているところだった。・・・