メディア掲載  グローバルエコノミー  2013.12.20

財政は持続可能か、消費税率、53%の可能性も

日本経済新聞 「経済教室」2013年12月11日掲載

 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が日本経済を刺激している。2013年にはインフレ率と経済成長率が上昇し、日経平均株価がここ1年で50%余り上昇したことに表れているように、楽観的な見方が強まっている。また、安倍政権は将来の健全な生産性の伸びの基盤になり得る構造改革の野心的な青写真を提示した。

 こうした成功にもかかわらず、日本の将来の繁栄に向かう道に立ちはだかる体重800ポンド(約360キロ)のゴリラのような大きな障害物を、筆者は深く懸念している。それは公的債務である。

 このゴリラには二つの特徴がある。一つ目はその巨大さだ。日本の公的債務の国内総生産(GDP)比率は12年に200%を上回った。これほど高い債務GDP比率は経済の足を引っ張る。大量の国債を民間部門に保有してもらうために、政府はリスク調整後のリターンで民間の投資機会よりも高い実質リターンを提供しなければならない。これによって民間投資がクラウディングアウトされて(締め出されて)しまう。

 家計(個人)や金融機関は、企業への貸し出しよりも国債の保有を選ぶ。また企業は、リスクの高い投資よりも貯蓄を選好する。政府債務の規模が膨大であることを考えれば、日本の非金融企業が、借り入れよりも貯蓄の方が多い「貯蓄家」であることは驚くにあたらない。

 政府債務はまた資源を若者から高齢者に移転する。国が増税する代わりに借り入れ(国債)を増やすことで、一部の高齢者は将来の高い税金を免れる。増税の前に死亡してしまうからだ。高い税負担を余儀なくされるのは、残った若者やその子孫だ。日本におけるこのような移転の規模は異例の大きさだ。

 米南カリフォルニア大学のダグラス・ジョインズ教授と筆者の共同研究による予測では、1956年以前に生まれた人は、生涯において日本政府に支払った税金と社会保険料の合計よりも、公的年金の形で受け取る純給付の方が多い。最も恩恵に浴するのは第2次世界大戦中に生まれた人たちだ。彼らは、生涯の純給付が2300万円にのぼる。

 これとは対照的に、57年以降に生まれた人たちは税金と社会保険料の支払いが給付を上回る。66年から2039年の間に生まれた人たちは、給付よりも生涯に支払う額の方が1500万円以上多くなる。最も大きな影響を受けるのは76年から2005年の間に生まれた人たちだ。彼らの場合には、生涯の支払い超過額が3000万円を超える。・・・



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日本経済新聞 「経済教室」2013年12月11日掲載