メディア掲載  グローバルエコノミー  2013.11.26

減反報道に思う

共同通信社より配信

 マスコミが一斉に減反廃止を報道した。しかし、戦後農政の中核である減反・高米価政策が簡単になくなるとは、にわかに信じ難い話だ。食管制度がウルグアイ・ラウンド交渉の結果廃止されたように、これだけの大転換を行うには相当な環境変化が必要である。しかし、環太平洋連携協定(TPP)でコメの関税を撤廃しないという方針なのだから、減反を廃止して米価を下げる必要はない。

 食管制度の高米価政策でコメが過剰になったため、1970年から減反が始まった。農家を減反に参加させるため、政府は減反面積に応じた補助金(アメ)を交付した。減反に協力しない農家には、翌年の減反面積の加重や、機械などの補助金を交付しないなどのムチも用意した。

 民主党政権は、ムチを止めて、減反に参加した農家に戸別所得補償を交付した。アメとムチを、減反補助金と戸別所得補償のアメとアメに変えたのだ。今回の自民党の見直しは、民主党が始めた戸別所得補償を廃止して、減反に参加しない農家にも、水資源を蓄え、洪水防止など農業の多面的機能に着目した直接支払いを導入するというものだ。

 さらに、前回の自民党政権末期から、コメ農家にとって作りにくい麦や大豆に代えて、米粉や飼料用などの非主食用に向けられるコメを作付けさせ、これを減反(転作)と見なして、交付してきた補助金を増額しようとしている。

 産業競争力会議での民間議員の主張や戸別所得補償の廃止に目が奪われ減反廃止と報道される。もう一つのアメの減反補助金は拡充される。減反の維持でこそあれ廃止ではない。米価は下がらない。農業専門紙は、減反廃止とは報じていない。国民のために正確な知識に基づく報道が望まれる。