メディア掲載  グローバルエコノミー  2013.10.29

日本の農業は本当に弱いの?

エコノミスト に掲載(2013年10月29日号)

 日本の農業は衰退している。農業総産出額は1984年の11兆7000億円をピークに減少傾向が続き、2011年には8.2兆円とピーク時の約3分の2の水準まで低下した。特にコメの減少は著しく、農業総産出額に占めるコメの割合は60年ごろは5割だったが、10年にはついに20%を下回った。65歳以上の高齢農業者の割合は60年の1割から08年には6割に上昇した。

 耕作放棄地は10年に40万ヘクタールまでに拡大し、埼玉県や滋賀県の面積にほぼ等しい。農林水産省は耕作放棄の原因を農家が高齢化したためだと説明する。しかし、これは間違いである。高齢化も耕作放棄も、その原因は農業収益の低下である。農業収益が低下したので、子供が後を継がなくなり、今の農業者が農業を続けざるをえなくなって、高齢化した。また、農地を耕しても収益が上がらないので、耕作放棄する。高齢化と耕作放棄は同時に進行しているが、両者の間に因果関係はない。

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)をめぐって、自民党や国会の農林水産委員会は、コメ、麦、牛肉、豚肉、乳製品、砂糖などを関税撤廃の例外とし、これが確保できない場合は、交渉から脱退も辞さないと決議している。しかし、こんなに多くの品目を例外要求している国はない。最終的に、日本政府は、「せめてコメだけでも」と交渉するのだろう。・・・


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