メディア掲載  グローバルエコノミー  2013.10.01

TPPのドミノ効果

高知新聞に掲載(2013年9月22日付)

 どの国からの輸入品にも同じ関税をかけるのが、WTO、世界貿易機関の基本原則である。協定に参加する国の輸入品には関税を撤廃するが、参加しない国には関税を徴収するという自由貿易協定は、このWTO原則の例外である。

 自由貿易協定の本質は、参加しない国を差別することである。参加すれば利益があるが、参加しないと不利益を被る。TPPも自由貿易協定の一つである。

 2年前、当時の野田総理がTPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ると表明したとたん、カナダ首相とメキシコ大統領は、本国と相談することなく、その場で参加を決断した。これは、米国に加え、日本も参加するという広大な自由貿易圏から排除されるのではないかという恐怖からだった。残念ながら、正しい認識を持つ政治的リーダーが少ない日本では、今年3月の参加表明まで、小田原評定が繰り返された。

 日本の参加後、習近平国家主席がオバマ大統領にTPPについての情報提供を求めるなど、中国もTPPに関心を持ちだした。韓国も、TPP参加を検討し始めた。なぜか?自由貿易協定では、協定参加国内で一定以上の付加価値を付けた産品しか、関税撤廃の恩恵を受けられない。協定外の国でほとんどの部分を生産した製品を排除するためだ。米国に輸出する際、日本はTPPに参加しているので、日本だけでなく他のTPP参加国の付加価値も合計して、この基準をクリアすれば良い。しかし、米国との自由貿易協定だけでは、韓国企業は韓国内だけでこの基準を越えなければならず、日本企業に比べ不利となるのだ。

 ドミノ倒しのように、自由貿易協定が大きくなると、次から次へと参加国が増えていくのである。