メディア掲載  グローバルエコノミー  2013.08.05

農業立国への道

商工中金グループの(株)商工中金経済研究所の会員向け月刊誌「商工ジャーナル」2013年8月号から転載した

 TPPに参加するしないにかかわらず、我が国農業は衰退傾向にある。農業総産出額は1984年の11兆7千億円をピークに減少傾向が続き、2011年には8.2兆円とピーク時の約3分の2の水準まで低下した。農業所得は90年の6.1兆円から07年には3.3兆円へとほぼ半減した。減少が著しいのがコメである。農業総産出額に占めるコメの割合は、60年頃はまだ5割だったのに、10年には、とうとう20%を切ってしまった。65歳以上の高齢農業者の割合は、60年の1割から6割に上昇している。

 食料安全保障に不可欠な農地の面積も、61年に609万ヘクタールに達し、その後公共事業などで105万ヘクタールを造成し、本来なら714万ヘクタールあるはずなのに、455万ヘクタールしかない。現在の全水田面積250万ヘクタール、農地改革で小作人に開放した194万ヘクタールを上回る260万ヘクタールの農地が、半分は耕作放棄、半分は転用されて、消滅した。

 耕作放棄地は10年、40万ヘクタールまでに拡大し、埼玉県、滋賀県の面積にほぼ等しいものになっている。農林水産省は耕作放棄の原因を農家が高齢化したためだと説明する。しかし、これは間違いである。高齢化も耕作放棄も、その原因は農業収益の低下である。農業収益が低下したので、子供が後を継がず、今いる農家が農業を続けざるを得なくなって、高齢化する。また、農地を耕しても収益が上がらないので、耕作放棄する。高齢化と耕作放棄は同時に進行しているが、両者の間に因果関係はない。...


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