論文 外交・安全保障 2013.06.25
「インターネットと通信の秘密」研究会は、2012年11月から2013年5月までの期間、情報セキュリティ大学院大学が主催し、電気通信事業者やインターネット・サービス・プロバイダの有力企業が参加して行われた。当研究所はこれに協力した。研究会の成果は、添付URLの報告書「インターネット時代の『通信の秘密』再考-Rethinking 'Secrecy of Communications' in the Internet Age」にまとめられた。
Executive Summary
1. 本報告書は、情報セキュリティ大学院大学が主宰し、電気通信事業者やインターネット・サービス・プロバイダの有力企業に参加いただいた、「インターネットと通信の秘密研究会」(2012年11月~2013年5月)の成果を取りまとめたものである。
2. 参加者に共通するのは、個人の権利としての「通信の秘密」の重要性は十分に理解した上で、郵便や電話の時代に発展した論理が、インターネットの時代には見直しが迫られているという問題意識である。
3. 検討の結果、参加者は上記の問題意識を再確認し、次の2つの視点を中心に、何らかの見直しが必要であるとの結論に至った。①インターネット時代に「通信の秘密」の変質がみられる。(第1章)、②電話時代からの伝統的な「通信の秘密」の論理は、インターネット時代では「通信の秘密」に関して、「過剰」と「空白」を生み出している。(第2章)。
4. その上で、見直しのための視座として以下の3点を中心に検討した(第3章)。
A)憲法論的視点、B)事業法的視点、C)非対称の解消。なお非対称の例として、これを細分し「通信サービスと通信サービス以外」の間のもの、「電気通信事業者と事業者以外の者」の間のもの、「日米の規制環境の差」を取上げた。
5. その結果、次の7つの提案をするに至った(第4章)。1)「通信の秘密」の理念の整理、2)3層構造(狭義の通信の秘密、他人の秘密、プライバシー関連情報)に基づく見直し、3)「通信の秘密」に関する事業者の責務、4)クラウド・ビジネスの規律、5)コミットメント責任、6)サイバー攻撃や行動ターゲティング広告等への対応、7)「正当行為」や「通信当事者の合意」の意味についての再考。
6. しかし、インターネットという新しい強力なツールは、「通信の秘密」という部分だけに影響を及ぼすわけではなく、今やメディアの秩序全体に影響を与えつつある。第5章では、以下の3点について付言しているが、これらを見直す過程で、「通信の秘密」についても、再再考が必要になるかもしれない。a)通信と情報処理と放送の融合、b)メディア規制に関するPBCモデル、c)インターネットの登場とI型モデルの有効性。
詳細はこちら News2013/06/10よりご覧ください。