メディア掲載  外交・安全保障  2012.09.25

実効支配の強化と誤解

共同通信より配信

 日本政府が決めた尖閣諸島の国有化は、東京都による所有を目指した石原慎太郎都知事の発言を受けた「次善の策」だった。日本政府は国有化によって実行支配の強化を狙ったわけではない。島内での構築物建造など実効支配強化の動きを阻止する措置だった。 

 しかし、こうした意図が中国側にきちんと理解されなかった。国内での所有権の移転にすぎないのに、国有化が実効支配の強化として受け止められてしまった。「今までの日本とは違う」との誤解が中国側に生まれ、日本のナショナリズムの台頭とみられた。日本政府としては、想像していなかった展開だ。 

 愛国教育を推進してきた中国の政府が国民に対し、物事の真実を十分に伝えてこなかったというツケの裏返しでもある。 

 中国では近年、海洋権益擁護の大方針の下、武装警察の海上版である「海警」、海上保安を担当する「海監」、漁業監視船を所有する「漁政」などの組織が実力を付けている。これらの組織が権益を主張し始め、政治指導者の言うことを聞かなくなる危険性もある。 

 かつて中国漁船が1000隻ほど尖閣諸島に向かったが、引き返したことがある。鄧小平氏が権力を握っていた時代で、政治家の指導力が利いていたからだ。しかし今回は、そうした展開が保証されていない。尖閣問題が、これまで経験したことのない「未知の領域」に入る恐れすら否定できない。 

 日本の政治指導者が頻繁に代わり、対外政策の弱体化をも招いている。中国はそんな日本の"足元"を見ていることも、忘れてはならない。 

 それでは今後いかに事態を収拾させるか。当面は状況を悪化させないため、日本側は海上保安庁と警察で対応しながら、日中双方の政治指導者が自制を互いに求めあうしか現実的な方策はない。 

 長期的な課題もある。領土問題は当事者が互いの結論だけを言い合っても解決しない。中国が領有権主張の根拠としている中国側文献には真偽の点で重大な問題があり、日本側は真正面から反論していくべきだ。「領土問題は存在しない」としてきた従来姿勢を見直すことも必要ではないか。