メディア掲載  エネルギー・環境  2012.08.07

エネルギー革命(5):高い環境エネルギー技術が日本を支える!

夕刊フジに掲載(2012年7月22日付)

 エネルギー危機が顕在化している。エネルギーの確保が危惧される時代に入っていく。日本では「1000年に一度」といわれる東日本大震災と大津波に襲われ、福島第1原子力発電所がメルトダウン(炉心溶融)を起こした。  

 地震によって外部電源を喪失し、津波によって、炉心冷却に必要な海水ポンプが機能停止した。また、防水されていない地下にあった電源盤と非常用電源が水没し使えなくなり、バックアップの炉心冷却ができないまま、長時間の電源喪失状態に陥リ、炉心溶融に至った。  

 技術的観点からいえば、このような事故は十分回避し得る。  

 原因はプラントの設備設計や配置設計の問題に帰結する。長時間の全電源喪失事故を想定していない安全審査指針と規制にも問題があり、またこのような苛酷事故に対策してこなかった事業者にも問題がある。極めて残念であるが、技術的には十分克服できた課題と言わざるを得ない。設計者、事業者、規制当局の責任がそれぞれに問われるところである。  

 原発事故を受けて、現在、政府でエネルギー基本計画の見直しが行われている。2030年の電源構成目標を設定すべく検討が進められている。基幹電源の原子力発電が危機にさらされている。戦略的エネルギー政策という観点からこの問題について考えてみよう。  

 わが国は、石油や石炭、天然ガス、ウランのすべてを海外に依存しており、自給率はわずか4%。「エネルギーの自給率を向上させ、一方で海外のエネルギー資源をいかに安定的に確保するか」が戦略の基本となる。  

 世界各国はエネルギー確保をめぐって、熾烈な生存競争を始めており、それは将来ますます激しさを増すであろう。南シナ海での中国とASEAN諸国との紛争や、東シナ海ガス田に関する日本と中国の対立も続いている。南シナ海から東シナ海にかけては日本のエネルギー輸送の生命線である。中近東の緊張がホルムズ海峡封鎖につながり、石油が途絶される恐れもある。中国とインドの高度成長で「2030年ごろには化石燃料の逼迫(ひっぱく)をきたす」とも考えられている。  

 戦略的エネルギー政策とは、その時々の経済性や市場原理に委ねるのではなく、資源ナショナリズムが国際的に高まる中で、国家としてのエネルギー安全保障が最優先されなければならない。原子力と再生可能エネルギーは安全保障の中核を担うエネルギー源である。  

 迫りくるエネルギー危機を回避・克服するためには、これまで述べてきたエネルギー革命を踏まえて、(1)クリーンで高効率な火力プラント技術(2)安全で安定した原子力エネルギー技術(3)安定化されて経済性を有する再生可能エネルギー技術を総動員して、わが国のエネルギー安全保障を確保していく以外ない。  

 環境エネルギーに関する、日本の高い技術開発力は、省エネルギーと地球温暖化抑制という観点から日本の未来と成長を支え、発展途上国の成長と安定に貢献できるのである。 <了>