メディア掲載  エネルギー・環境  2012.08.02

エネルギー革命(4):革新的原子炉は安全性高いエネルギー源

夕刊フジに掲載(2012年7月21日付)

 「シェールガス革命」「バッテリー革命」に続く、第3のイノベーション(技術革新)は「革新的原子炉」である。  

 現在、米国および中国で建設中の最新の軽水炉型原子炉は「受動的安全性」といって、東京電力福島第1原発で起きたような全電源喪失事故時にも、自動的に炉心冷却を行える安全設計が施されている。さらに、コンパクトで安全性を高めた中小型炉(SMR)の開発が、オバマ政権下でも「クリーン・ニュークリア・イニシアチブ」として進められている。  

 2009年11月、マイクロソフト創設者のビル・ゲイツ氏がひそかに来日した。ゲイツ氏は、このようなSMRの次世代型炉である先進型安全炉4Sの開発を行ってきた東芝を訪問し、新しい革新的原子炉の共同開発を呼びかけた。私財2000億円を投入して、燃料交換を必要とせず、高レベル廃棄物も極めて少ない原子炉開発をしようという計画である。  

 これは原理的には、日本の高速増殖炉「もんじゅ」と同様、ナトリウム冷却炉に分類される。炉心に新しいコンセプトを導入し、増殖されたプルトニウムを燃料として、燃料交換せずに何十年も燃やし続けるような燃料構成を取っている。2030年ごろの実用化を目指しており、第4世代炉と呼ばれている。  

 原子炉の技術は、日々進化し続けている。21世紀にふさわしく、安全で経済的、高レベル廃棄物の減容化、低レベル化などが図られている。  

 日本では、米国から技術導入された軽水炉技術だけではなく、1970年代から、戦略性を持って新型原子炉を開発してきた。舶用炉「むつ」、新型転換炉「ふげん」(重水を冷却材として濃縮しない天然ウランを燃料とし得る)、高速増殖炉「常陽」「もんじゅ」、多目的高温ガス炉(産業用熱供給や水素製造)などだ。  

 技術的には、いずれも開発に成功しており、実用化を待つ段階にある。しかし、開発初期にありがちなトラブルの発生にもかかわらず、長期間の運転停止を余儀なくされたり、初号機ゆえの割高な建設費のため、実用化が見送られたままになっている。技術導入と自主開発の両輪の上に、わが国は高い原子力開発経験と独自の技術を有している。  

 革新的原子炉は、進化し続ける原子力技術と、その蓄積の上に築かれている。発展途上国の成長や地球温暖化対策のために不可欠な、安定かつ低炭素なエネルギー源として位置づけることができる。