メディア掲載  エネルギー・環境  2012.07.31

エネルギー革命(3):地熱発電と海洋エネルギーに期待!能力&コストに魅力

夕刊フジに掲載(2012年7月20日付)

 第3のエネルギー革命の前に、東日本大震災後に大いに注目された「再生可能エネルギー」について考えてみたい。  

 前回説明したバッテリー革命は、不安定な再生可能エネルギーを安定化させる。天候によって左右される太陽光発電や風力発電を蓄電によって、夜間でも、風のない日でもバックアップ電源なしに供給可能となった。エネルギー的に完全自立型住宅も可能で、太陽光や太陽熱でエネルギーを貯めて、家庭が必要とする電気のすべてを賄える時代が来るであろう。  

 先ごろ、政府のエネルギー環境会議は発電コストを精緻に見直し、各種電源のコストを公表した。火力発電は燃料費や二酸化炭素対策費、原子力には事故による損害額まで考慮し、発電コストを割り出した。  

 その結果、原子力や火力は1キロワットあたり10円前後だが、太陽光は現状で約4倍、2030年でも平均的に2倍近くと算定された。これにバッテリーまで加えると、さらに割高な電源とならざるを得ない。革新的な次世代太陽電池に期待するとともに、さらなるバッテリー革命や系統連係システムの改革が待たれるところである。  

 再生可能エネルギーの中でも、地熱発電と海洋エネルギーは安定しており、能力的にもコスト的にも大いに期待できる。欧米中心に、この分野の技術も進展し、普及している。  

 日本は地熱資源に恵まれ、世界第3位の資源ポテンシャルを有している。革新的な小型・高効率の地熱バイナリー発電システムも普及している。地熱資源がある地域は国立公園内に多いため、地熱発電のネックは規制緩和と、温泉業者など地元の理解にある。  

 海洋エネルギーも膨大なエネルギーを有している。洋上風力だけでなく、海流・潮流発電も革新的システムが開発されて普及を待っている。利害関係者との調整と理解があれば、大きな可能性を持つ電源である。海中送電には直流送電が必要になるなど、革新技術が必要とされ、これも日本の送電技術向上に大きなチャンスといえる。  

 このように、地熱と海洋再生可能エネルギーは大きな可能性を持つ。さらなる革新技術によって、コスト的にも競争力ある電源として開発してゆく必要がある。明確な政策目標と法整備が急がれる。  

 再生可能エネルギーは広く分散し、地域の自立分散エネルギーとしての活用に適している。一方、大都市集中電源や産業用大電力には、火力や原子力のような高効率で大規模で安定的電源が不可欠である。これらの発電も、革新技術によってクリーンで高効率な電源として進化し続けている。