メディア掲載 エネルギー・環境 2012.07.27
第2のエネルギー革命は「バッテリー革命」である。リチウムイオンをはじめとする電池技術の飛躍的発展が、「小規模、小型、短寿命」の乾電池の世界から、「大規模、大型、長寿命」の新しい電池の世界を招来させた。
この技術はパソコンと携帯電話の蓄電池によって、一貫して日本がリードしてきた。約7年前に、日本製ディーゼルハイブリッド・トラックにリチウムイオン電池が搭載されるに至って、イノベーション(技術革新)となった。次世代自動車の主役が、燃料電池車から電気自動車、またはプラグインハイブリッド車に移ったのである。
日本発のバッテリーイノベーションは続く。約5年前、青森県の六ケ所村の商業風力発電所(5万キロワット)に、「ナトリウム硫黄(NAS)電池」(3.5万キロワット)が併設された。風が吹かないときでも安定して電力供給できることを示し、世界を驚かせた。続いて、やはり不安定な太陽光発電にもバッテリーが併設されて、雨の日でも太陽光による電気を使えるようになったのである。
これらの日本の動きに、早くから将来の電気自動車の競争力に関して危惧を抱いていた米国自動車産業界は、大統領を動かして、「基礎」「応用」「製造技術」に至る、国家的な研究開発(R&D)プログラムを展開した。その成果は、新しいタイプの先進的バッテリーが風力発電所に併設されるなど、確実に、日本を追随してきている。次世代空気電池やケミカル・キャパシタ(コンデッサ)が、ベンチャーによって実用化されたのである。
この集中とスピード感は「米国恐るべし」の感を抱かせる。リチウムイオン電池に一極集中している感すらある日本の産業界に、多少の危惧を抱くだけではなく、次世代電池の基礎研究に巨額な研究開発投資をしている日本の科学技術政策は大丈夫であろうかと懸念する。
日本は基礎研究ではトップランナーでありながら、実用化・商業化のところで周回遅れになる例が少なくない。バッテリー革命を制するものが、次世代自動車を制し、再生可能エネルギーシステムやスマートグリッドシステムで世界を制する。
日本は最も近い位置にいるのだから、戦略的かつマーケティング力を生かして世界を制するべきである。この世界に2番手はあり得ないのだ。