メディア掲載 エネルギー・環境 2012.07.25
現在、世界では「エネルギー革命」が進行中である。世界的規模でのイノベーション(技術革新)が拡大しており、明るいエネルギーの未来を目指している。この革命は今世紀になってから起こったものであり、東日本大震災での原発事故とは関係ない。
まず、第1の「シェールガス革命」を説明したい。
これは、地下深く数千メートルの頁岩(シェール)層に閉じ込められている天然ガスを、米国のベンチャーたちが、水圧破砕(人工的に大きな割れ目をつくってガスを採取する技術)など、革新技術を駆使して商業規模での産出に成功したことから始まった。
この開発にはオイルメジャーも参入しており、世界中から資金が投資されている。瞬く間のうちに、米国のエネルギー構造を変革し、世界の将来見通しを劇的に変えた。いまなおこの革命は進行中である。
米国においては、天然ガスの価格が劇的に低下し、日本が購入している天然ガス価格の5分の1程度まで下落した。その波及効果で、鉄鋼業や化学産業が米国内に回帰し、米国経済に明るい見通しを与えている。しかも、このシェールガスは中国や東欧にも埋蔵されており、天然ガスの黄金時代が、米国発の革新技術によって世界規模で展開されると予測される。
天然ガスは、化石燃料の中では最もクリーンで、二酸化炭素(CO2)の排出も少ない。天然ガス「コンバインドサイクル」と呼ばれる発電システムは、発電効率が60%にもおよび、現在使われている火力発電の効率をはるかに上回る。
この技術は、日本の産業界が世界をリードする技術である。
シェールガス革命は、燃料の主役が石油から天然ガスに交代し、今世紀が、天然ガスの黄金時代であることを告げている。特に米国、ヨーロッパ、中国、ロシアのエネルギー安全保障は極めて強固なものとなったといえる。
世界各国が「中東の石油・天然ガスに依存せざるを得ない」と考えられてきた状況が一変した。エネルギー地政学における中近東の優位性も大きく後退したといわざるを得ないが、このことは世界に安定性をもたらすのではないかと期待されている。