メディア掲載  グローバルエコノミー  2012.07.06

外資系企業誘致は日本の雇用を拡大

中部経済新聞「経済サプリ」(2012年6月29日付)に掲載

 高度成長期に盛んで今は廃れたものに、日本人論がある。1970年「日本人とユダヤ人」79年「ジャパン・アズ・ナンバーワン」はベストセラーになった。自信にあふれた日本人が自意識過剰となっていたころだ。
 逆に今は自信を失っている。環太平洋連携協定(TPP)に参加すると、日本は米国に食い物にされる、外資の進出によって日本の内需が持っていかれる、ISDSという投資家保護条項によって、日本に進出した外資系、特に米企業から日本政府が訴えられ、多額の賠償金を取られてしまうなどの主張がなされる。いつから、日本人は排外的、反米的になったのかと思う。根底に弱者意識がある。その裏返しとして、外国知識人を頻繁に著書で引用する「拝外主義」の側面がある。
 外国企業は悪者か。90年代に英国は盛んに日本企業を誘致しようとした。雇用が拡大するからだ。日本の地方自治体が企業誘致に努めるのも同じだ。企業の本籍が日本でも外国でも、日本での雇用の拡大は変わらない。
 マクドナルドなどが日本で営業しても、雇用しているのは日本人だし、生み出す付加価値は日本の国内総生産(GDP)として、日本人労働者に配分される。外資系企業が進出したからといって、日本のGDPが減るのではない。外資系企業が新しい商品や技術を日本に導入すれば、日本のGDPや雇用は増える。
 ISDS条項があっても、政府が外資系企業だけを理由もなく不利に扱ったりしなければ、訴えられたりはしない。逆に、ISDS条項による保護があるから、日本企業も安心して海外に投資できるし、外資系企業も日本に進出して、日本の雇用を拡大してくれる。輸出だけでなく、企業を日本に誘致することも雇用拡大の道なのだ。