メディア掲載  グローバルエコノミー  2012.04.10

日本を見る海外の目

熊本日日新聞(2012年3月20日)に掲載

 日本たたき(ジャパン・バッシング)から日本無視(ジャパン・パッシング)だと言われるようになって久しいが、最近の日本を見る海外の目に、パッシングを通り越して、かすかに侮蔑のニュアンスが感じられるようになってきた。
 2月末、私は米商工会議所と米日経済協議会共催の会合で、「TPPと日本」と題して講演を行った。その際、1980年代の日米通商摩擦が華やかなりしころ、日本にその名をとどろかせた米国の元交渉者は「日本はTPP交渉参加を決断できるのか」と質問した。
 交渉参加をめぐり、米国は日本との事前協議に時間を割いているが、日本政府はTPP反対派を説得できないのではないか、米国は無駄な時間をかけさせられているのではないかという趣旨だろう。
 通り一遍の回答で、彼が納得するとは思われなかったし、講演を聞いている人たちも皆、通商交渉のエキスパートばかりだった。私は、「あなたもご存じのように、日本は外圧がなければ決断できない。今の事前協議はあと1カ月もたてば終了する。日本が交渉に参加するときには、その90日前に米政府は連邦議会に通報しなければならない。通報の際には、米政府は日本に参加の意思を確認してくるだろう。それが、日本が正式参加を決断できる時だ。」と答えた。
 かつて日本を目標にしたマレーシア、発展途上のベトナムもTPP交渉に参加して、米国と対等に渡り合っている。
 米国に一方的に食い物にされるのではないかという日本の反対論が本当なら、どうしてこれらの国が進んで参加しようとするのだろうか。カナダ、メキシコに続いて、コスタリカまで参加の表明を行った。米国の冷たい視線の裏にあるものが分かるような気がする。