メディア掲載 グローバルエコノミー 2012.02.21
環太平洋連携協定(TPP)交渉参加と消費税率引き上げで、民主党は割れた。野田佳彦首相は「TPP交渉参加に向け関係国と協議に入る」と表明したが、反対派はあくまで事前協議だと主張している。野田首相は消費税率引き上げを貫いたが、離党者が出るなど党内の反対は強い。しかも、多くの議員は二つのいずれにも反対している。
消費税率引き上げ反対の理由に景気への悪影響があるが、景気が好転するまで待っていては、いつまでたっても財政再建はできない。他方、TPP参加は経済に好影響を与え、悪影響を相殺する。逆に、政府債務残高が国内総生産(GDP)の2倍に拡大している中で、財政再建を放っておくと、国債価格の低下、金利の上昇を招き、景気は悪化しかねない。 さらに、増税で食料品の価格が上昇すると、食料品支出の割合が大きい貧しい家計に打撃を与えるという反対論がある。他方、TPPには、農産物関税がなくなると、農産物価格が低下して農業が打撃を受けるという反対論がある。 しかし、農産物は食料品である。反対派は、食料品について、消費税では価格引き上げに反対し、TPPでは価格引き下げに反対しているのだ。 国際価格より高い農産物価格を消費者に負担させている額は、経済協力開発機構(OECD)の推計で4兆円。消費税1.6%分に相当する。消費税率を5%引き上げても、TPPに参加すれば実質引上げ率は3.4%に緩和される。 財政破綻を回避し、経済を成長させながら、所得が低い消費者にも配慮する観点に立てば、消費税率を引き上げてTPPに参加する道を選択すべきではないだろうか。農家への補償は、戸別所得補償など現在の農業予算の見直しで十分賄える。