メディア掲載 グローバルエコノミー 2011.10.31
野田政権~経済政策への注文~
野田政権には環太平洋パートナーシップ協定(TPP) の交渉にできるだけ早
く参加してほしい。TPPは関税の引き下げだけではありません。労働などWTO(世界貿易機構)が扱っていない分野の国際的なルール作りという意味もあります。
中国との関係も重要です。中国はレアアースの輸出規制のように、大きな国力を背景に他国の経済活動を脅かすことが懸念されます。日本を含めアジア太平洋地域でTPPに参加する地域が拡大すると、中国はTPPを無視できなくなり、力に対してルールで対抗できるようになります。
TPP交渉は(参加国が大筋合意を目指す)11月にはまとまらないと思います。だけど、早めに交渉に参加しないと、日本の発言チャンスがなくなってしまいます。交渉の結果、国益に反するとなれば協定に署名しなければいいだけです。
TPPに入るととんでもないことが起こるという指摘がありますが、TPPが広い地域のルールになることを考えると、交渉に参加して不都合な部分を直していかないと日本に不利益なルールが出来上がってしまいます。
一方、TPPで悪影響を受けるとされる農業にとって懸念材料は、高齢化と人口減少が続く国内のマーケットに合わせて生産すると、縮小するしかないということです。高い関税で国内市場だけを守るという思考から抜け出し、TPPなどによる自由貿易を進め、人口も所得も増加する地域に輸出していけば、日本農業のマーケットを拡大できます。
そのためには、規模拡大が必要です。米の減反をやめて価格を下げれば、零細な兼業農家の人たちは農地を貸し出すようになります。主要農家の人たちに限り直接支払いという形で補助すれば地代負担能力が上がり、農地を引き取ることができるので、規模は拡大しコストが下がり、輸出競争力は高まるでしょう。現在の戸別所得補償制度のように、サラリーマンとして給与をもらっているのに、週末だけ農業をしている兼業農家の所得を補償する必要があるでしょうか。TPPには農協が大反対していますが、農業を含め日本全体の国益を考えて首相にリーダシップを発揮してほしいですね。