メディア掲載  財政・社会保障制度  2011.06.16

金融緩和・二重債務・放射線調査 復興前に考えるべき三つの課題

週刊ダイヤモンド 「データフォーカス」 2011年6月4日号掲載

①円高に備えた先制的な金融緩和
 今後、3年程度のあいだに10 兆~20兆円程度の財政資金が復興事業として支出される。マンデル=フレミング・モデルで考えれば、財政支出が増えると円高が誘発される。財政出動が金利上昇圧力を生み、通貨市場で円に対する需要が高まるからだ。1995年の阪神・淡路大震災後も円高が進んだ(左のグラフ)。足元の為替も警戒が必要だ(右のグラフ)。過度な円高が進めば、輸出が収縮し、デフレと需要不足が悪化する。政府は財政健全化のスタンスを堅持し、国債の信認を維持し、長期金利上昇を防止する必要がある。日本銀行は金融緩和姿勢を市場に強く印象づけ、できる手段は先制的に実施すべきである。

②二重債務を解決する公的機関
 震災被害で無価値になった銀行貸し出しは、福島、宮城、岩手の3県だけで、1兆円になるともいわれる。グローバルなサプライチェーンの再構築を急ぐという「効率性」の観点から、震災前の旧債務の減免を急がねばならない。地元金融機関の判断に任せていては時間がかかり過ぎる。国が出資して「債務整理機構」を設立し、被災者の旧債務を地元金融機関から一括して買い上げ、債務免除や債務の株式化などの処理を行わせるべきだ。地元金融機関には旧債務の譲渡と引き換えに劣後債などで資本注入を行い、新規融資できる体力を増強する。・・・・

 

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