メディア掲載  外交・安全保障  2011.04.08

北朝鮮の核問題に各国は本気で取り組むべきである

『世界』別冊 no.816(2011年4月1日発行)に掲載

 朝鮮半島では、昨年3月に韓国哨戒艦の沈没、11月に延坪島砲撃などキナくさい事件が北方境界線(NLL) 付近で発生した。前者は北朝鮮の魚雷攻撃によって惹き起こされたというのが数カ国の専門家で構成された国際調査の結果であり、後者は調査を待つまでもなく明々白々な北朝鮮からの攻撃であった。今年に入ると南北の対決状態の解消や南北軍事会談の呼びかけが北朝鮮によって行われ、また韓国側からも対話の提案が行われているが、このような宥和的な言葉が南北間の関係を改善させるきっかけとなりうるか保証の限りでなく、朝鮮半島はいぜんとして緊張した空気に包まれている。
 この間、北朝鮮によるウラン濃縮の事実が、延坪島砲撃の約十日前に北朝鮮を訪問した米スタンフォード大学の核問題専門家、ジーグフリード・ヘッカー教授によって海外へ伝えられた。ウラン濃縮は武力の行使ほど赤裸々な攻撃行動ではないが実際にはそれ以上の危険を孕むことであり、一月末の胡錦濤中国主席訪米の際発出された共同声明においても米中両国はそのことについて懸念を抱いていると特記された。
 ヘッカー教授は広島と長崎へ投下された原爆を開発・製造したことで有名な米ロスアラモス国立研究所の所長を務めたこともあり、並みの専門家ではない。しかも北朝鮮には過去何回も足を運んでおり、その核開発の実情にもっともよく通じている専門家であるが、今回の北朝鮮訪問で見聞きしたことは事前の予想をはるかに超えるものだったらしく、同行者の一人は「あごが外れるくらい驚いた」と言っている。
 ヘッカー教授は一方で、北朝鮮による核開発の進行状況を過大視してはならないと戒めるなど科学者らしく冷静な目で実態を見極めようとしておりその報告の信頼性は高い。また、技術面の問題にとどまらず、短い言及であるが北朝鮮とのこれまでの外交交渉にも触れ、見直しを求めている。ヘッカー教授は米国政府にも訪朝結果を報告しており、どのように受け止められたのであろうか。・・・

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