論文  外交・安全保障  2010.11.25

「北朝鮮をめぐる最近の情勢」(ワセダアジアレビューNo.8)

『ワセダアジアレビュー』No.8(2010年10月23日発行)に掲載
 北朝鮮については不可解なことが多い。2010年3月の韓国哨戒艦撃沈事件については、北朝鮮は関与を否定し、国連本部のあるニューヨークなどで説明会を開いて各国のマスコミに自国の主張の正当性をアピールしていたそうだが、韓国は第三国を交えた国際調査の結果に基づき、事件は北朝鮮の魚雷攻撃により引き起こされたと主張している。それが事実であったとして、北朝鮮はなぜそのようなことをしたのか。
 核兵器やミサイルについては、北朝鮮は開発・保有の事実を公表し、また、そうすることが必要であったと主張しているが、我々から見れば、日本など周辺諸国の安全を脅かす危険な行為であり、迷惑至極である。北朝鮮自身にとっても乏しい資源を投入してまでそうする必要があったのか、分からない。
 「後継者問題」は、北朝鮮としては、金正日委員長の指導体制が将来変化する可能性など口にすべきでないと考えているらしく、結論が出る以前に外部であれこれ議論することには嫌悪感を示しているが、各国としては関心を持ってあれこれ取りざたしている。
 北朝鮮に関する情報は乏しい。いわゆるガサネタに属することは多々あるが、信頼できる情報となるとまことに乏しい。北朝鮮は閉鎖的であり、各国との関係が薄いためであろうが、それでいて危険な行動に出るので、北朝鮮は犯罪国家であり、まともに話しなどできないと決めてかかる人もいる。ブッシュ前米大統領が北朝鮮をイラン、イラクとともに「悪の枢軸」と呼んでいたのもそれに近かった。
 しかし、北朝鮮の行為を一刀両断的に断罪するだけで問題を解決し、核兵器やミサイルを放棄させることはできるだろうか。非難するのはかんたんだが、解決するのは別問題であり、そのためには信頼できる情報が少なくても北朝鮮のことを知る努力をしなければならない。かの有名な戦略家、孫子は、戦いに勝つには敵を知らなければならないと言っていた。同じことである。
 最大の問題は・・・・

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