コラム  外交・安全保障  2009.04.27

外交安保分野の政治任用官候補を養成する「PAC道場」とは何か

 当研究所の外交・安全保障グループは、2009年6月より「PAC道場」(外交安保分野における政策エキスパート育成の場・フォーラム)を設立いたします。PACとは、政治任用候補者(Political Appointee Candidates)の頭文字をとって勝手に作った造語ですが、今回はこの道場の設立趣旨についてご説明いたします。

 最近、日本の政治家は難しい政治決断を回避して官僚バッシングばかり、官僚たちも政治家と政策を一緒に作るのが恐ろしくて逃げ回ってばかりではないでしょうか。両者をつなぐインターフェイスが欠如しているため、正しい政策がタイミング良く立案・実施されていないように思います。

 こうした現状を少しでも改善し、国家に求められる適切な外交安保政策を立案・実施するためには、そろそろ日本にも日本型の「政治任用制度」を導入する必要があるのではないかというのが、私たちの問題意識です。

 かかる見地から、PAC道場では将来の政治任用候補者(Political Appointee Candidates)を10名程度公募した上で、彼らを政策シミュレーション(wargaming 可能な限り現実の政策決定過程に近いヴァーチャルリアリティ)の中で徹底的に鍛え、2年ほどかけて一人前の政治任用官候補として養成したいと考えています。

 その手始めとして、7月4日〜5日には中東・南アジア地域でのクライシス発生という想定で、1泊 2日で政策シミュレーションを実施します。形式は完全匿名、チャタムハウス・ルールで、都内のキヤノンの研修施設です。その後もこの種のシミュレーションを年4回の予定で実施いたします。

 勿論、日本で今後政治任用制度が根付くか否かは大きな冒険ですが、幸い、米国防省・国防大学の友人たちも協力してくれそうです。「我こそはこの大冒険の主人公だ」と思う方がおられたら、是非ともこの企画に応募して頂きたいと思っています。

 また、誤解のないように予め申し上げておくべきことがあります。それはこのPAC道場が官僚組織に挑戦したり、これを代替しようとするものではないことです。

 政治任用官またはPACの目的は、政治と行政のインターフェイスとして働き、政治家とともに政治的責任を自らとる、言い換えれば、官僚を政治的責任から守ることにより、官僚組織が本来持っている政策立案実施機能を再活性化させることです。

 「PAC道場」の詳細はPAC募集要項をご覧ください。また、自分は参加できないが、将来の政治任用官の候補として適任と思われる若手を知っているという方がおられれば、その方にもこの企画をご紹介頂ければ幸いです。