コラム  2026.07.06

自己研鑽

福井 俊彦

1980年代以降、世界経済はグローバル化と情報通信革命の流れに沿って比較的順調に進展して来ました。ところが最近に到り、コロナの蔓延、ウクライナ戦争、パレスチナ紛争、更にはイラン情勢の混乱により、立往生を余儀なくされています。

昨今特に目立つ現象は、エネルギー価格を筆頭とする物価の上昇ですが、これは今までに経験したインフレとは異なる性格を持つものであります。過去のインフレは、景気が良すぎて総需要が総供給を上回って生じたものですが、目前のインフレは、国境を越えて精緻に張り巡らされたサプライチェーンの随所に、コロナや相次ぐ紛争によってしこりが生じ、そこから発熱して生じたものであります。

インフレに対しては、各国中央銀行が全責任を負って対処するものですが、目前のインフレは特殊な性格を持つものですので、中央銀行の利上げは必要ではあるものの、利上げが行き過ぎると物価抑制が不十分なまま景気を悪化させ、スタグフレーションに陥るリスクを孕んでいます。そのため各国中央銀行は容易に完璧なパフォーマンスを得ることが難しいまま苦闘を続けています。

この先は、何をおいても世界秩序の回復が第一の課題だと目されます。これまでは、第一次世界大戦後に出来た国際連盟や第二次世界大戦後に出来た国際連合といった組織に加え、パックスブリタニカやパックスアメリカーナと称して世界秩序の要の役割と責任を担う主体の存在が大きかった。しかし今は、アメリカファーストと称してこの主体の影が薄くなっています。

換言すれば、世界は今や歴史的な転換局面を迎えており、新しい未来設計が急務と目される段階に差し掛かっていると申せましょう。

既に万能選手と目されるレベルにまで育ってきているAIにその答えを問うてみては如何か。私には、AIがこのような課題に答えを出してくれるとまでは思えません。

AIはデータの分析においては超能力だが、将来への夢を見る技までは備えていません。これはやはり人々が、特に若者が時代認識を新たにして真摯に取り組む以外に道は無いのではないでしょうか。

我が国においても、この先は特に若者が単に現状に不満なく暮らすというのでなく、世界秩序の面でも我が国経済の競争力の面でも常に将来へ向けて夢を抱き、その夢の実現を目指して自己研鑽に励む、という方向性が望ましいのではないでしょうか。

ただ我が国の場合は、少子高齢化により若者のウェイトが下がって周囲から大事にされ過ぎる面もあることを考慮に入れますと、若者の生活心情を改革するための教育・社会変革に一刻も早く着手する必要があるように思われます。


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