メディア掲載 2019.02.04
最近、G20サミット(金融世界経済に関する首脳会合)などの首脳会合では、反保護主義やグローバル化の負の側面も無視できなくなった。G20での合意形成も難しく、存在価値の低下が指摘される。
日本は2019年のG20の議長国だ。G20財務相・中央銀行総裁会議の議長を引き継いだ麻生太郎財務大臣は「G20を再活性化する」と意気込みを見せた。そして最重要テーマである世界経済のリスクと課題の整理の下で、「過度な経常収支不均衡の原因や対応の方向性を議論する」とした。
米中貿易問題への関心が高いが、これを重要な課題の一つとしたのは、財の貿易や2国間収支に議論を限定すべきではないからだろう。
ただ、米国と中国の経常収支の対GDP(国内総生産)比は、それぞれ5.8%の赤字、9.9%の黒字をピークに、18年(予測値)は2.5%の赤字、0.7%の黒字と大幅に縮小している。このようなときにはマクロの対外不均衡の議論は活発化しにくい。
実際、10年のG20ソウルサミットでは経常収支不均衡問題を大きく取り上げたが、経常収支不均衡が縮小すると、議論は下火になった。また、金融危機前に米国経常収支の大幅赤字の原因をめぐって過剰貯蓄か資本移動性の高まりによるのか議論が二分され、持続可能性についても議論が割れた。過度な不均衡の判断は難しい。
G20は韓国が議長のときに「継続した大規模な不均衡を評価するための参考となるガイドライン」を作ったが、これまでの経験から同様の議論の延長で、意味のある結果が得られるとは思えない。
日本にはグローバルな視点を強め、比重が増している新興国を分析の枠組みにしっかり組み込んで、不均衡の背景を分析することが望まれる。対外不均衡は、自国だけでなく関係国の経済や政策から影響を受けるので、議論を通じて経済が相互に影響し合っていることがより認識されれば、貿易などの政策決定の際に他国を意識せざるを得なくなる。対話という協調の場として重要なG20の存在価値を先々につないでいくためにも、ここで土台固めが必要だ。