メディア掲載 2018.09.27
日本銀行の政策誘導金利は、1995年9月以降今日までの23年間で、0.5%が上限になっている。FOMC(米連邦公開市場委員会)の政策誘導金利の下限(中央値)は0.125%だが、この23年のうちの16年半はそれよりも低い金利だ。現在の日銀の物価見通しの下で、この記録更新がいつまで続くのか、見当もつかない。
低金利の継続は、政府が強調する財政再建や構造改革に資するはずだが、実際にはこれまで抜本的な改善が見られず、逆に先延ばしに手を貸している。超低金利の継続を前提にすれば楽観的な財政再建計画が出せるし、再建に疑問符が付いても市場の警報は鳴らず、財政節度は弛緩していると言わざるを得ない。
そのため大きな政府となり、政府の人材確保は民間の入手不足を悪化させ、成長の制約要因となる。政府のデジタル化が地方を含めて進めばかなりの人材を解放でき、コスト削減もできるが、今の財政状況ではその予算を手当てできず、後回しにならざるを得ない。成長戦略にかかる政府の対応が遅々として進まないのも、予算の余裕のなさが一因だろう。
世界経済が急速に変化している中、企業も変革が必須で、低収益の事業を高収益を生む事業に切り替える必要がある。しかし、企業は、収益がある程度確保できることや政府の成長戦略の遅れを理由に、かなりの経営資源を低収益事業に張り付けたままでいる。
家計の貯蓄・消費行動については、低金利継続による財産所得や年金の減少で高齢者の貯蓄率の低下が顕著だ。30代以下では低金利の下で住宅購入が増え、負債の対所得比率が急速に高まっており、消費性向はかなり落ち込んでいる。社会保障など、先行きを見通せないことが多く、国民の節約志向は継続しそうだ。
異常な低金利が当たり前になり、それを前提にした経済活動が官民共に増えると、至る所でゆがみが生じ非効率的な経済となる。これでは成長期待は高まらない。早急に、超低金利の継続が実体経済に与えている潜在的なコストを認識する必要がある。