メディア掲載 2018.08.15
今回の決定は現状維持を続けるための微調整にすぎない。新しく導入されたフォワードガイダンス(将来の指針)は「当分の間、極めて低い金利水準を維持することを『想定している』」との弱い表現で、将来の政策を縛るものではない。今後の金融政策の方向性は、経済や物価情勢、市場の反応にもとづく政策委員会の判断で変わってくる。
大事なのは、物価見通しを大幅に引き下げたにもかかわらず追加緩和をうまく回避できたことだ。「緩和の強化」か「正常化の一歩」かどちらにもとれる曖昧な文言にあえてし、市場の混乱や批判を避けられた。
大規模緩和の副作用への対応は不十分。いま政策を修正しても、金融機関の収益改善には時間がかかる。金融システムに停滞の懸念が強まるなかで、国債市場の機能度合いへの配慮にとどまったのは、政策委員会が副作用と本気で向き合っていないからだ。政策委員が議案を出すことで、日銀内で本格的な議論がなされることを期待する。
金融政策の出口論は、出口が遠い時期にこそ進めた方がよい。金融・経済情勢を総合的に判断して適切な水準に利回り曲線を引き上げることは、金融引き締めとは別物だと発信すべきだ。出口に関する議論を日銀が一切封印しているために混同を招いている。
日銀は市場ときちんと対話する必要がある。まず経済・物価見通しは現実的なシナリオを出すべきだ。物価上昇の「モメンタム」や株式市場の「リスクプレミアム」は、どういった指標・基準で判断するのか明らかにすべきだ。現状では日銀がどう動くか手掛かりとなる材料が少なすぎて、市場では政策を深く議論することができない。