メディア掲載 2018.08.06
日本の消費者物価は、日本銀行の見通しに対して下振れており、次の展望レポート(7月31日公表)での下方修正は避けられない。需給ギャップは拡大し、日銀の「企業短期経済観測調査(短観)」の販売価格判断DIもプラスになった中、なぜ下方修正が続くのか、原因の究明が待たれる。
日米欧のエネルギーを除く消費者物価を財とサービスに分けてみると、グローバル化、IT化の進展で、財の前年比はゼロ前後に収斂しつつある。サービスについては、欧米でははっきりと上昇し、サービスの財への相対価格は上がっているのに対して、日本では20年平均で0.1%。直近6月までの1年間の上昇率でも0.2%で、相対価格は21世紀に入ってからほぼ横ばいだ。
4月の展望レポートは弱めの賃金・物価の背景として、企業や家計の「賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行」を挙げた。しかし国際競争にさらされにくいサービスについては価格決定に自由度があるはずで、慣行を前提に企業が行動しているとは思えない。供給に比べ需要が強い場合は企業は値上げをする。実際に品目別では、サービスでもかなりの価格上昇が散見される。
少子高齢化・人手不足が進む中、日本ではマクロで高い成長・強い需要は期待できない。他方で日本企業は世界の競争環境の急速な変化に対応できず、競争力やブランド力を失ってきた。ここに物価が全体として上がりにくい根本原因があると思う。
企業は変革のためにも利益が必要で、共盤事業の市場シェアは確保しようとする。それは過当競争、供給過多を生み、企業は勝ち残るために、過剰サービスをやめたり、総人件費抑制・省力化投資を行い、価格上昇を抑制すると考えられる。
サービスには公的サービスや家賃など景気に感応的でないものも多い。日本ではサービスは「おまけ」であって、対価を支払うべきものとの認識が薄く、質に応じた価格設定が難しい面もある。現在の日本経済構造では、サービスの相対価格が米欧同様に上昇していく姿はなかなか想定できない。